「シリ丹バレーキックオフミーティング」イベントレポート

2020年9月27日(日)

四季の森生涯学習センター

 

シリ丹バレーは、「兵庫2030年の展望」に描いた将来像を実現するための地域版リーディングプロジェクト「おしゃれな田舎TAMBA」に向けた主要施策です。丹波地域に多くの起業家を集め、そのアイデアや技術により、空き家・廃校の利活用と併せ、地域が抱える様々な課題を解決しようとするもので、このたび起業家と地域住民の接点を作るキックオフイベントを9月27日(日)に開催しました。

 

基調講演では、認定NPO法人グリーンバレーの大南信也理事から、「創造的過疎」をキーワードに数々の取組を進めている徳島県神山町の事例をお聞きしました。若者や起業家・芸術家の移住、ITベンチャー企業のサテライトオフィス誘致など、その先進的な取組に刺激を受けるとともに、「丹波には羨ましいほどの地域資源がある。シリ丹バレーの取組を通じて、すきな丹波をすてきな丹波にしてほしい。」という大南さんの言葉に、大いに勇気づけられました。

 

若手起業家によるパネルディスカッションでは、地域PRや農林業へのIT活用など、地域課題解決のためのアイデア・技術が紹介されました。その後に行った来場者とのクロストークでは、空き家活用による地域活性化などについて活発な議論が交わされ、地域と起業家の連携に対する期待の大きさがうかがえました。

 

当日の模様はインターネットで配信していますので、是非、ご覧ください。

 

1 基調講演「想像を超える創造を生み出すまちづくり」
認定NPO法人グリーンバレー 理事 大南 信也 氏

 

クリエイティブな人材が集まれば街が変わる。今の地域には、若者に魅力のある仕事が欠如している。これが一番の課題。神山町には、若者にとって魅力的な職場(えんがわオフィス、カフェ・オニヴァなど)が生まれ、地域に可能性が感じられる状況になってきた。身の回りから少しずつ変えていく、友人を地域につなぐ、あるいは自ら起業することで、住民自身が動き始める。自分たちもできるのではないかと思い始める。

【講師の大南信也さん】

神山町では、空き家の多い地域にワークインレジデンスを適用した。ワークインレジデンスは、受入れ側が働き手を指名することで、まちのデザインを可能にした取組。空き家改修が上手くいくかどうかは、職種を探るトライアルの場所が必要だ。

レジデンス事業から関係人口づくり、新機軸の環境が生まれる。行き来する人がいるだけで、まちの環境は変わる。サービスが都市圏側で起こると、雇用も都市圏で起こってしまう。すべての地域がブランド化で勝負できるわけではない。地域でサービスを生む地域内経済循環が重要だ。

シリ丹バレーはイノベーションが自生する場として、色んなプロジェクトが勝手に生えてくることをイメージしている。働き方や働く場所の自由度を高め、丹波で高度な職ができることを証明しなければならない。単純な焼き直しではなく、起業をベースにしながら、日本の風土にあったものを作っていってほしい。

 

2 パネルディスカッション「地域課題解決に貢献する起業家たち」

パネリストの皆さんは起業して、雇用を生み出す段階にも達している。イノベーションが自生する地域に近づいている。(瀬戸)

【講師の大南信也さん(左)、コーディネーターの瀬戸大喜さん(右)】

福住地域をエリアとしてマネジメントし、「ITとクラフトアートで外貨を稼げるいなかまち」の構想を掲げて、セレクトショップ・シェアハウス・シェアオフィスを運営し、外貨を稼ぐ起業家やビジネスの集積を図っている。集落のルールを守りながら、自分のスタンスは変えずにやってきた。雇用を抱えるより、皆が独り立ちできるようサポートしている。(安達)

【㈱Local PR Planの安達鷹矢さん】

 

地理情報システムやアプリケーションの開発・提供をする傍ら、有機農園とカフェレストランを経営している。空間情報を誰でも簡単に活用できる社会を目指している。農業者・ITエンジニアの育成も重要。規模を大きくすれば影響を及ぼす範囲が拡がって面白い。(山口)

【㈱パブリック・キッチンの山口圭司さん】

 

丹波の魅力をブランディング、デザイン、コンサルティング、Webなどの面からデザインしている。チラシ、ホームページ以外の評判づくりからも最適なものを選択し、顧客に提案している。社員を抱えるより、多彩なパートナーを設け、目的をぶれさせずにチームで取り組んでいる。(恒松)

【㈱ご近所の恒松智子さん】

 

皆さんが地域から頼られることで、よい循環を生む。丹波は人に恵まれている。自分たちが気づいていないだけで、移住者・起業者が掘り起こしてくれている。両者が寄り添えばよい取組みになる。(大南)

 

3 会場とのクロストーク

空き家・廃校の利活用について

空き家改修で地域の方の集える場所を作りたい。それだけでは無理なので、農泊で地域外からの宿泊客を得たいが、いい案はないか。小学校も小規模化している。移住を増やす方策は。(参加者)

参加者からの質問(空き家改修)

地域の方の集える場所にすることと、地域外からの宿泊客を得ることは別の話。内需をつかむビジネスと外からのビジネスは別に(順番に)した方がよい。(安達)※要補足

 

「人と地域がつながる」をコンセプトに廃校を宿泊施設として運営している。(収益性のない)地域の人が集える場所にしたい、一方で儲かる宿泊施設にしたい。まち協出身なので事業的な側面に弱い。専門的な、たとえば労務管理ができる人がほしい。人材のネットワークがあればありがたい。(参加者)

地域の課題を「見える化」しているのは良いこと。(瀬戸)※要補足

 

 

ITの活用について

ネット販売を企画している。他県ではネット販売で会員を増やし収益を上げている。紙パンフレットから脱却し、IT活用をどう図っていくか。(参加者)

回答なし

 

今どんな資源があるか、今ある資源がどう形成されてきたかという、未来につながるIT活用について聞きたい。(参加者)

参加者からの質問(IT活用)

AR等に加え、SR(代替現実)により未来に伝える技術が出てきている。自分が見聞きしたことを追体験するようなことを考えている。(安達)

 

 

山林の境界線はなかなか可視化できない。狭い範囲ではなんとかなっているが、200町歩の山を抱えており、若い人に山に入ってもらうにはどうすればよいか。(参加者)

【参加者からの質問(林業の課題)】

GPSは山の中ではぶれる。分っている人の情報を反映できるソフトを開発している。人と人のコミュニケーションをデータに残す、無駄を省く、それをデータ化することで、コストも下がる。自分がやってきた経験も伝えたい。(山口)

 

ポストコロナ時代の働き方について

これまでは都市の人が地域を発信していたが、これからは地域の人が都市の力を借りずにやっていかねばならない。起業するチャンスではある。(恒松)

 

中小企業が家賃負担をカットするために田舎へ来るという選択はある。ただ、福住は移住希望者が空き家の数より多いので、そこをクリアしなければならない。(安達)

 

空き家の数が少ない。あっても都市部の水準に達していないので、そこを解決したい。行政の空き家改修支援制度も使って、在宅勤務・リモートワークに活用できるような物件を整備することを検討している。(山口)

丹波はやはり農業。農産物と料理人の掛け合わせ「シェフインレジデンス」が思い浮かぶ。違う能力を持った人間の新しい掛け合わせを考えることによって、人の行き来が生まれる。シリ丹バレーの核はITのようでいて、ITを見るような目が農業にも林業にも向けられて、新しいことが自生してくることを期待している。(大南)

 

4 金澤副知事コメント

地元出身でないパネリストが壇上に上がっている現状。丹波は受け入れる雰囲気があり、外から人が入ってきてのびのびやっている。

農林業が危機に瀕している。困りごとがあるなら、ビジネスが生まれてくるはず。元々住んでいる皆さんに適性がある。地元のビジネスクリエイターが生まれてきてほしい。

【金澤副知事】